3坪小屋、棟上げ!
ところで、来年1年間ログハウス作りをする間、
休憩する場所が必要である。
キャンプ用のタープなどで代用する人もいるようだが、
毎日作業する私にとっては、タープでは心もとない。
雨、風、雪を避け、夏の強い日差しから、自分を守らなければ、
体力的にはつらいと予測される。
今年の夏は特に暑かったため、ヘトヘトになっていたことを思い出すと、
休憩小屋の確保は、意外に大事なことである。
ログビルディングスクールへ通い始めた当初から、神田さんから
「卒業製作として、3坪小屋を建ててみたら?」
と、言われていた。
しかし、今は10月である。
今から3坪小屋をひとりで年内に仕上げるのは、
私の刻むスピードでは難しい。
そこで、スクールで途中まで組上げていた『3坪小屋』を買い取り、
残りを自分一人で作ることにさせてもらった。
ただし、設計はダブテイルの出窓なども
手間のかかりそうなものは省略するなど、
私の好きなように変更することにした。
10月末、久々のチェーンソーワーク。
感覚を取り戻すのにちょっと時間がかかった。
初日はショートピース4本(1/2R)仕上げるのに、
夕方5時30時までかかった。
この時期は日没も早くなっており、最後は投光器を使わなければならない。
翌日、同じ量の作業を終えたのが、5時。
少し、早くなる。
さらに翌日は、4時30分に終了。
また、早くなる。
何日か後には、4時に終えるようになった。
やはり、人間は訓練が大事であることを実感する。
10Rまで積み上げ、次はとうとうヘッダーである。
ここから先は、多分分からないことだらけである。
周りで働いているビルダーに聞きながら、少しずつ進めていく。
ヘッダーの加工が終了し、積み上げると、何となく家らしく見えてきた。
いよいよ最終段、12R目。
この段は、非常に作業量が多い。
単純に積み上げるだけでなく、桁については、勾配カット(屋根の傾斜に合わせたカット)、
床根太がかかるフラット面作り、妻側はフラット面作成、
外壁・内壁が納まる部分の溝切り、などなど。
ただでさえ時間がかかるのに、アウトリガーさせてしまったため、
素人には、どんな納まりになるのかが分からなくなる。
最後の1Rに何日も費やしてしまった。
後は、棟木を造り、束を作る。
ドーマーを取り入れる設計にしたために、棟木も途中で屋根勾配を変えなければならず、
さらに複雑になってしまった。
プロにしてみれば、何のこともないそうだが、
経験がない私には、出来上がりのイメージがつかめない。
でも、教えて頂いた通りにやるしかないのである。
細かな失敗を重ねながら、何とか棟木と束を造り終えた。
いよいよ、棟上げである。
神田商会のビルダーに手伝ってもらい、1本目の束をのせる。
ほぞの納まりは、きつすぎず、緩すぎず、イイ感じである。
2本目の束を乗せる。
今度は、きつくてなかなか入らない。
束を揺すりながら、なんとか納まる。
とうとう最後の棟木である。
クレーンに吊った棟木が近づいてくる。
『最後だ、最後だ!』と心の中でつぶやく。
片方の束に棟木のほぞが納まる。
あと1個所。
ところが、束の鉛直がずれていたために、数cm、ほぞ穴の位置が合わない。
かけや(木槌)で束をたたいて、位置を修正し、何とか収めようとする。
『頼むから、納まってくれ~!』
祈る気持ちで、かけやを振り回す。
何回も束を叩いているうちに、上の方から『スコン』という音がした。
棟木のほぞ穴が、束のほぞに入った音である。
「やった~!、棟が上がった~!」
その後、手伝ってもらったビルダーに記念に写真をとってもらう。
その後、30分程、呆然と3坪小屋を眺めていた。
今年の5月からのことが、走馬灯のように蘇ってきた。
スクール初日でヘトヘトになったこと、
チェーンソーの歯を逆につけてしまい、丸太が全然切れなかったこと、
曲面カンナがうまく使えずに自主トレをしたこと、
日差しの強い日に熱射病になったこと、
土地がなかなか決まらずにイライラしていたこと、
脚立から落ちて、足首が思いっきり腫れたこと・・・。
今となってみれば、いい思い出であり、来年への糧となることだろう。
そして何よりも大きいことは、ここまで自力でやったことで、
自信がついたことである。
大きい建物には、また別の苦労もあるだろうが、
きっと、何とかなるに違いない、いや、何とかしてみせる!
この3坪小屋は、来年の春に自分の土地へ運び、屋根をかけて完成させ、
休憩小屋として機能する予定である。
開口部などで、細かな処理は残っているが、来年へ持ち越すこととして、
ログハウス修行の年はこれにて終了!
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